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桜の季節が巡っても
第15章 蜜夜の春
「さっきは余計な事を、きっと考えていた。私じゃない何かを思ってた」
-だから、教えない。
拗ねたような泉夏の口調。
何を指しているのか-秀王は気がついた。
「俺が考えているのは、泉夏の事だけに決まってる。他に思う事なんてあるわけがない」
それは限りない本音だったのだが。
間、髪を入れず、泉夏に言い返される。
「絶対嘘」
-だから、私。
泉夏は全部を言おうとして、やめた。
急に悔しくなってしまったのだ。
自分は彼だけなのに。
彼だけを見つめ、彼に従うだけだったのに。
高まる悦びに、もうこのまま攫われる-そう、思っていたのに。
その直前になんの前触れもなく、自分を導く動きが止まった。
どうしたのだろう-彼を窺えば、自分を見てさえくれなかった。
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