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桜の季節が巡っても
第15章 蜜夜の春
「言い訳じゃなく。視線を外した先に、たまたま時計が目に入っただけだ」
彼の口振りに嘘は感じられなかったが、それでもまだ口を開く事は難しい。
やっと迎えた夜だった。
嬉しさに涙したばかりだった。
瞬きもせずに、ひたすら自分だけを見てろと強制しているのではない。
それは自分だって無理だ。
でもそっと様子を窺っていれば、それは『少し』の時間には思えなかったのだ-少なくとも、自分にとっては。
僅かに苦しそうに眉を寄せ、短い息を吐いた。
『たまたま目に入った時計』を暫しじっと見遣り、何かを考えている風だった。
その姿を見てしまえば、面白くなくなったとしても仕方がなかった。
憂いの晴れない泉夏の唇から顎へ指先を伝わせ、秀王は独り言の延長のようなそれで呟く。
「泉夏を一晩中見ていたいって思っているのに、現実はそう上手くいかないらしい」
「うまく…いかない?」
泉夏は思わず、訊き返す。
彼の口振りに嘘は感じられなかったが、それでもまだ口を開く事は難しい。
やっと迎えた夜だった。
嬉しさに涙したばかりだった。
瞬きもせずに、ひたすら自分だけを見てろと強制しているのではない。
それは自分だって無理だ。
でもそっと様子を窺っていれば、それは『少し』の時間には思えなかったのだ-少なくとも、自分にとっては。
僅かに苦しそうに眉を寄せ、短い息を吐いた。
『たまたま目に入った時計』を暫しじっと見遣り、何かを考えている風だった。
その姿を見てしまえば、面白くなくなったとしても仕方がなかった。
憂いの晴れない泉夏の唇から顎へ指先を伝わせ、秀王は独り言の延長のようなそれで呟く。
「泉夏を一晩中見ていたいって思っているのに、現実はそう上手くいかないらしい」
「うまく…いかない?」
泉夏は思わず、訊き返す。

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