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桜の季節が巡っても
第3章 恋慕の秋
「あれ…伊東(いとう)君?」
見知った同級生が衝突未遂の相手だったので、とりあえず安堵する。
「ごめん。私、よく見てなくて…ってか、伊東君カラオケは?みんなもう先に行っちゃってるよ?」
「知ってる」
「え?」
「流川を待ってた。一緒に行こうと思って」
クラスメートの彼はそう言って、破顔した。
「あ、そうなの?ごめんね、遅れて-」
戸惑いながらも泉夏が謝ると-伊東大樹(だいき)は違う違う、と頭を左右に振った。
「俺が流川と一緒に行きたかったから」
大樹は照れたように、笑った。
「あ、そうなんだ…?」
彼の言葉の意味を量り兼ね、泉夏は困惑する。
意味深に聞こえ、正直気にはなったが、とりあえずこれ以上遅れをとるわけにはいかなかった。
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