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桜の季節が巡っても
第15章 蜜夜の春
「しゅう…」
-秀王。
小さな声量ではあったが、彼女は確かに漏らした。
呆気にとられ。
次いで泣きたいような、笑いたいような複雑な感情に駆られ、秀王は泉夏の細い身体を抱き締めた。
「泉夏」
初めて自らの名を口にしてくれた、彼女の汗に濡れた額に、頬に、唇に、接吻した。
愛おしい以外、言葉はない。
愛おしくて、愛おしくて、仕方がなかった。
こんなに近く。
こんな深く。
繋がっている。
それなのにもっともっと、愛してやりたくなる。
でもこれ以上、どうしたらいいのだろう。
その方法が思いついてくれない-。
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