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桜の季節が巡っても
第16章 永劫の春
手にしていたバッグを一番近くのテーブルにそっと置き、窓に歩み寄る。
引かれていた白いカーテンをいくらか開き、滅多に拝めるものではない街の夜景に見惚れていれば、背後から声がかかる。
「気に入ってくれた?」
ホテルの最上階から、まさか夜の煌めきを眺める事が出来るとは思っておらず-興奮したそれで、泉夏は答えた。
「勿論。凄く素敵な眺め」
泉夏の弾んだ声音に、秀王は素直に嬉しくなる。
「あ。でもこんな立派なお部屋、お金-」
最後まで言いかけ、泉夏は慌てて口を噤んだ。
その焦った様子に、秀王は笑わずにはいられなかった。
「毎回は流石に厳しいけれど。特別な日に泉夏を連れて来てあげられるくらいには、稼いでるつもりだ」
-だから、大丈夫。
面白そうに告げられて、泉夏は真っ赤になる。
考えもなしに口走ってしまうところが、まだ子供なのだ-猛省する。
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