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桜の季節が巡っても
第16章 永劫の春
「ごめんなさい。折角の先生の好意を無にするような事-」
「知ってる、泉夏が心配して言ってくれてる事。一番は泉夏に喜んでもらいたいからだけど、嬉しがってる泉夏を見ると俺も凄く嬉しくなるんだ。つまりこれは俺の為でもある」
-だから泉夏が申し訳ないって思う必要は、少しもない。
不快感の欠片もなく告げられて、浅はかな発言をしかけた自分を責める行為も一時ストップする。
胸をいっぱいにするのは、満ち足りた想い。
恥ずかしさと嬉しさに俯きながら、泉夏は小声でねだる。
「…ぎゅってして欲しい」
待ち合わせたコーヒーショップに現れた彼に、歓喜するあまり抱きついてしまった。
だが、満席の店内でいつまでも抱き合えるほど恥知らずでもなく、数秒ですぐさま離れた。
それから夕飯を食べに和食のお店に行き、食事を終えてからのホテル到着。
肩を並べて歩く際は手を繋いでくれたけど、それ以上の触れ合いは当然不可能で。
ようやく誰にも邪魔されない空間に来たのだから、今こそ思い切り抱き締めて欲しかった。
自分からお願いなんて、大胆だろうか-頬を染めながら待っていれば、温かな腕が泉夏を包んだ。
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