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桜の季節が巡っても
第16章 永劫の春
こんなにも長い間。
こんなにも長い距離。
物理的にどんなに離れていても、相手の心は決して離れて行かない。
繋ぎ止めるだけの自信が備わっていたら、良かったのだろうけど-。
「今日を無事迎える事が出来たなら、とりあえずは大丈夫だって思ってきた。勿論、どんなに近くにいても、離れて行ってしまう時はいくらでもある。距離だけの問題じゃないのは承知している。今夜が終わりでなく、寧ろようやく始まりだって事も。…それでもやっぱり、近くにいる事で得られる安心感は計り知れないと思うから」
-だから。
少しの間(ま)を必要とし、秀王は一旦口を噤んだ。
連続で言葉を紡ぐのは、なかなか容易ではない。
元よりそんなに上手く受け答えの出来る方ではないが-今夜は酷く感動している故、余計にだった。
「夏と同じように。冬と変わらず。あともう一回でいいから『待ってて欲しい』って切実に思いながら帰って来た。どきどきしながら、泉夏の後ろに立った。『お帰り』と笑ってくれて『今日が特別』だと言ってくれて、どれだけ感激したか。『今日が特別な日』だと思っていたのは自分だけじゃなかったって」
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