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桜の季節が巡っても
第16章 永劫の春
ちょっと苦しいくらいに力を籠められて、泉夏は小さな声を漏らした。
無意識にだったのだが、秀王は慌てて腕を緩めた。
ごめん-謝罪を口にし、泉夏の髪を撫でる。
残念ながら一度は短くなったそれも、今では随分と長く、艶やかに彼女の背を流れていた。
「『今日は特別』だから。『待っててくれてありがとう』の意味も込めて、いつもよりは少しはいい場所へ泉夏を連れて来たかったんだ。だからその…お金の事はほんとに気にしないで、今夜はただ『嬉しい』って喜んでくれたら嬉しい」
「…ん」
泉夏は素直に頷いた。
今夜ここを予約してくれていたのは、恐らくそういう意味合いで-ちゃんと、気付いてた。
遠距離だった間。
初夏とクリスマスに、一時的に帰って来てくれた。
たったの二度、しかもそれだって数日の僅かの帰国。
きっと罪滅ぼしも含んでいたと思う。
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