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桜の季節が巡っても
第16章 永劫の春
「でも、きっと断られるだろうなとも思っていたから」
-びっくりして、訊き返してしまった。
面白そうに笑われて、泉夏の頬は熟す一方だった。
「…こ、断らないし」
「なら、去年からお願いしていれば良かったな」
「え?」
「初めての夜から本当は『一緒に入りたい』って、ずっと思ってたから」
至極真面目な表情で告げられて、泉夏はすぐさま切り返せない。
「…それは絶対嘘」
どうにかやっとの事で否定する。
いくらなんでも、最初の夜からは有り得ない。
閉ざされた空間に一晩中、ふたりきり。
突然訪れた『初めての幸せ』に、緊張して仕方がなかった。
嬉しいけれど、心臓の音は今しもお互いに聞こえてしまいそうなほどで。
そんな夜に『そんな事』まで考える余裕など、なかったに決まってるのに。
羞恥に染まって俯いていれば、彼の腕の中にもう一度収まっていた。
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