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桜の季節が巡っても
第3章 恋慕の秋
目の前の車の往来を無言で眺めていたが、その沈黙を破ったのは大樹だった。
「流川、あのさ」
「え?」
「あのさ…流川って好きな奴いるの?」
真剣な眼差しで問われる。
「え!?」
予想外の直球の質問に、泉夏の語尾が飛んだ。
好きな奴-好きな、ひと。
想い描くだけで恋しさが募る、ひと-。
泉夏の頬は朱が入ったが、街や車の灯りがあるとはいえ夜の闇がそれを隠し、幸い大樹は気付いていないようだった。
狼狽える彼女の様子を、肯定と否定どちらでとったのか-大樹は続けた。
「俺と、付き合ってくれないかな」
泉夏は大樹を思わず見つめ返した。
「私と…?」
「うん」
大樹は頷いた。
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