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桜の季節が巡っても
第3章 恋慕の秋
実際。
泉夏の言葉に、大樹の顔は瞬時に強張った。
はっ?誰が?-異論を唱えかけた龍貴の脇腹を、泉夏は強く肘で突いた。
『女の子はもうちょっと優しく扱わないと。好意を持ってもらいたい相手なら尚更。妹も怖がってるし、今日のところはこれで勘弁してよ。続きはまた明日以降に…ね?」
厄介な事に巻き込まれたなあ-龍貴は溜め息を吐いた。
それでも泉夏に合わせ彼が放ってくれた台詞で、大樹は赤くなり、青くなり-短く謝罪をした後(のち)、足早に駅まで去って行った。
仕事で接待を受けて、アルコールを多少なりとも口にした帰り道。
愛車を運転出来ないので、徒歩で駅に向かっていたところ-偶然出くわしたようだった。
相手の会社から帰りのタクシーぐらいを手配してもらえるだろうに、彼はそういう事は好まない。
たまたま一緒になったからタクシーを使って帰ってはいるが、一人なら電車だったはずだ。
ほんと頼りになるし、やっぱり色々格好良かったりする。
そんな彼にやんわり釘を刺された形となった大樹は大丈夫かな-ちょっと、同情しなくもない。
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