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桜の季節が巡っても
第16章 永劫の春
「でもこんな事なら、泉夏と入れば良かったな」
-折角『一緒に入ってくれる』って言ってくれてたのに。
冗談めかして言われ、泉夏は気恥ずかしくなる。
そんな約束をしていた事を思い出す。
シャワーを浴びるより早く求められ、いつしかすっかり忘れていた。
彼は覚えていたようだが、肝心の自分が眠ってしまい、どうしようもなかったのだろう。
その場凌ぎではなく、本当に『一緒に入ろう』と思っていただけに、ちょっと申し訳ない気持ちとなる。
やっぱりひとこと謝るべきかな-泉夏が暫し迷っていれば、包む込むように抱き直され、頭を優しく撫でられた。
「でもまあ、今夜は我慢する。これからは『そうしたい』と思えば、いつだってそう出来るから」
ゆったりと髪を梳かれる行為が心地良くて、これまたすぐに深い眠りに落ちてしまいそうになる。
まだ寝ちゃいけない-現実に必死にしがみ付き、泉夏はどうにか言を紡ぐ。
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