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桜の季節が巡っても
第16章 永劫の春
自分を両腕で包んだまま無言になってしまった彼に、泉夏は問い掛ける。
「…秀、あのね」
「うん?」
「秀が大学を辞めてから今まで、秀を『先生』って呼ぶひと、私以外にもいた?」
「泉夏以外、いなかったよ」
少しどきどきしながら待っていたので、望んでいた通りの答えをもらい、泉夏はほっとする。
何故今更-おかしくなり、秀王は笑った。
「どうしてそんな事を改めて訊いてくるの?」
今度は彼が質問する番だった。
一呼吸置いて、泉夏は口を開く。
「『私だけの先生』だった時期があったのかなって、知りたくなったの。…ってか、ずっと知りたかった。そしてまだ『私だけの先生』なんだって分かったら…凄く嬉しくなった」
「私だけ…嬉しい?」
彼女が言わんとしている事がいまいち把握出来ず、秀王は訊き返す。
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