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桜の季節が巡っても
第16章 永劫の春
大学の敷地内へ足を踏み入れると、桜の木々はほぼ満開に近かった。
昨日から時折吹く強風で、地面には薄い桜色の花びらが所々に散ばっている。
四年前を思い出す。
あの日は例年よりも開花が遅く、正に入学式がちょうど見頃の時期だった。
空は桜色、地面も一面桃色。
風は強かったけど、お天気で。
猛勉強の末、合格した大学で。
ばっちりメーク、緩やかに巻いた黒髪、新調したスーツ-全てが完璧だった。
コンタクトを落とすまでは。
「…先生、大丈夫?」
過ぎし日に思いを馳せていたのも、僅かの間(ま)。
泉夏は隣りの彼をそっと、気遣った。
「こんなに大量のものは久々に見たけれど…思いの外、平気だ」
彼女の問い掛けに、秀王は小さく頷いてみせる。
けれど、泉夏はやはり気が気でない。
「無理しないで。もしも具合が悪くなったりしたら、すぐに言って」
「泉夏と一緒だから大丈夫」
繋いだ泉夏の手を引き、秀王は桜のトンネルを潜り始める。
昨日から時折吹く強風で、地面には薄い桜色の花びらが所々に散ばっている。
四年前を思い出す。
あの日は例年よりも開花が遅く、正に入学式がちょうど見頃の時期だった。
空は桜色、地面も一面桃色。
風は強かったけど、お天気で。
猛勉強の末、合格した大学で。
ばっちりメーク、緩やかに巻いた黒髪、新調したスーツ-全てが完璧だった。
コンタクトを落とすまでは。
「…先生、大丈夫?」
過ぎし日に思いを馳せていたのも、僅かの間(ま)。
泉夏は隣りの彼をそっと、気遣った。
「こんなに大量のものは久々に見たけれど…思いの外、平気だ」
彼女の問い掛けに、秀王は小さく頷いてみせる。
けれど、泉夏はやはり気が気でない。
「無理しないで。もしも具合が悪くなったりしたら、すぐに言って」
「泉夏と一緒だから大丈夫」
繋いだ泉夏の手を引き、秀王は桜のトンネルを潜り始める。

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