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桜の季節が巡っても
第16章 永劫の春
「…良くも悪くもって。私、先生を悪くした事あった?」
気になる言い方だったので、一応の確認をとる。
「いや。いい思いをさせてもらってる」
微笑まれ。
泉夏は昨夜(ゆうべ)から何度目か知らない、大きな羞恥に包まれる。
「や、やらしい事言わないでっ」
吐き捨てるようにいい、急いで顔を逸らす。
「そういう意味で言ったんじゃない」
苦笑いで返され、余計に恥ずかしさで顔が染まる。
「紛らわしい言い方しないでっ」
勘違い。
もうほんと、穴があったら入りたい。
八つ当たり気味に、怒鳴ってしまう。
しかし当然の如く、彼には全く効かない。
「泉夏は何をしても可愛い。怒った顔も可愛い」
なんの迷いもなく告げられ、泉夏は最早どうしたらいいのか分からない。
口を噤んでこの場をやり過ごすしか、方法はない。
真っ赤になって俯くしかない泉夏に、秀王は破顔した。
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