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桜の季節が巡っても
第16章 永劫の春
「ほら。今だって、こんなに俺を楽しい気持ちにさせてくれている」
秀王の言葉に、泉夏はまだ火照ったままの面を上げた。
「泉夏といると、いつだって楽しくて。だから、いつだっていい思いをさせてもらってる」
目線が合うと彼は更に笑みを重ね、絡めた指に力を籠めた。
そんな事。
そんな事、自分の方だって。
自分の方が。
彼といて、いつだって楽しい。
いつだって、いい思いをさせてもらってる-。
感動に瞳が潤みそうになったその時、耳元に彼が口を寄せた。
「確かに昨夜は昨夜で、かなりいい思いをさせてもらったけれど」
囁かれ。
泣きたい気持ちは、一瞬で見事に消え失せる。
泉夏は唇を噛み締めて、彼を睨んだ。
「…ほら。やっぱり、やらしいっ」
泉夏の絞り出すような声に、秀王は声を立てて笑った。
「可愛いよ、泉夏」
「もうっ。それは言わなくていい。ほんと!」
本気なのか、からかわれているのか、段々曖昧になってきた。
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