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桜の季節が巡っても
第16章 永劫の春
「夏休み明け。初日。早朝。桜の木の下のベンチで」
合ってる?-問われ、泉夏は何度も頷いた。
「その指先が綺麗だと言ったのも…確かその日だった」
間違ってない?-微笑まれ、目頭が熱くなる。
薄い桃色に染まった爪先に目線を落とす。
雫が一粒、零れた。
「合ってる。全部みんな、合ってる-」
-有栖川先生。
綺麗に塗られた指先で、泉夏は涙を拭う。
「四年前から、毎日同じ色?」
「…違う」
「え?」
彼女に逢う数少ない日々、いつでもその細い指先を確かめれば、桜の花が咲いていた。
限りない日数しか逢わないのに、その都度同じ桜色。
その色を気に入っているからだと思ってた。
自分があの日に口にしてからずっと、その色だけを塗っていてくれていたのだと、自惚れて疑わなかった。
『ずっと同じ』-そう言われるのを前提で訊いた。
だから尚更、秀王は動揺を隠せない。
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