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桜の季節が巡っても
第16章 永劫の春
「…一度だけ、違う色にした日があった」
泉夏は、彼を見据えた。
「去年、先生から逢えないかってメールをもらった日。もういい加減、ずっと同じ色はやめよう。もう忘れよう。そう思って、初めて違う色を塗っていた」
パステルブルーの指先で、あなたからのメールを開いた。
あなたを諦めようとした矢先の、あなたからのメールを。
忘れようとする度に、あなたはどうして?-そう思いながら。
「…泉夏とは二度と逢えないはずだったんだな」
秀王は小さな溜め息を吐いた。
本当なら今頃、こうしてなんかおれなかった。
忘れてなど、勿論いない。
その現実に改めて直面する。
「…龍貴のお陰だ」
呟く。
ありがたいと思う気持ちと、申し訳ない思い。
彼はどんな思いで、あの時-。
「龍貴は…元気?」
自分の犯した罪から一時(いっとき)でも逃れたいが為の、苦し紛れの質問。
しかし弾けるように、彼女は笑った。
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