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桜の季節が巡っても
第16章 永劫の春
「龍貴が嫌いとか、そういう事じゃないんだ。あいつには本当に感謝してるし、昔からいい奴だなって思ってた。龍貴は一切関係ない。これは単なる俺の方の問題で…情けないけど、あいつと面と向かって会う勇気がまだない」
-だから。
秀王は自嘲した。
大事なものを奪ってしまった自分を、恨んでないのだろうか。
許せなくはないのだろうか。
自分だったら、そう簡単に吹っ切れる自信がない。
そう考えると、彼とふたりきりで会うのは、少なくとも今の段階では難しかった。
暫くの猶予が自分には必要だった。
そんな彼の心情をまるで見透かしたかのように、泉夏は遠慮がちに告げた。
「私が言うのもなんだけど…龍はそんなひとじゃないよ?」
「…うん。分かってる」
秀王は薄く笑った。
そんなひとじゃないから、自分に彼女を託してくれた。
『済まない』という感情も、彼にとってはただ鬱陶しいだけ。
自分次第で、彼とふたりでだってきっと問題なく会える-よく、分かってる。
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