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桜の季節が巡っても
第16章 永劫の春
まさか自分が通う大学の中で、キスをするなんて。
まさかその相手があなただなんて。
彼の唇の感触にうっとりした直後。
誰かに見られたかも-泉夏は慌てて周囲を確認する。
しかしそれは余計な心配だった。
ただでさえ人影は少なく-実際、ふたりの周りには誰もいなかった。
ほっとし。
でもやっぱり少しだけ恥ずかしくて、嬉しいけど俯いてしまう。
掴んだ泉夏の手を握り締め、秀王は語りかける。
「四年前のあの日、形見のキーホルダーをなんとか見付けたい一心だったけれど。今にして思えば、もうひとつの大事なものも探していたのかなって」
「もうひとつ…?」
泉夏は首を傾げる。
「泉夏を?」
愛しいひとを見詰め、秀王は答えた。
あの日。
あの時。
あの場所。
彼女を探す為に、自分はあそこにいた。
そして、見付けた。
探して、それで安心していた。
繋ぎ止めておけなかった-その時は。
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