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桜の季節が巡っても
第16章 永劫の春
桜のトンネルの奥に歩みを進めかけ-背面側に手を引っ張られる。
まるで足の裏が地面から離れないかのように、その場から一歩も動かない彼女。
秀王は繋いだままだった手を、後ろに引かれる形となった。
転倒する程ではなかったが、バランスを多少崩してしまい-訝しげに彼女を振り返る。
「泉夏…?」
-どうしたの?
確かめるより先に、名を呼ばれる。
「…しゅう」
「泉夏?」
「…その、それから先の話だけど」
言い淀む泉夏に、秀王は苦く笑う。
「もうさっき話してくれた」
「…続きを」
「続き?」
「そう」
「無理しなくて大丈夫だよ。もう十分嬉しかった。ほんとだ」
「…無理はしてない」
あんなにさっきまでは知りたいと願っていたのに。
いざ改まってその時を迎えれば、怖ささえ覚えてくる。
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