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桜の季節が巡っても
第16章 永劫の春
祈るような思いでいれば、彼女の瞳孔が僅かに広がった。
街をふたりで歩き、立ち止まって話をしていた場所は、ちょうど宝石店の前だった。
店頭のガラスケースの中。
照明を浴びて輝くそれらを見て、彼女は確かに心奪われていた。
気のせいなんかじゃない-確信した瞬間。
彼女の手を半ば強引に引っ張って、店の中へと入っていた。
『ありがとう』はその時、沢山もらった。
はにかみながら告げられて、泣きそうになるくらい嬉しかった。
『ありがとう』はこっちの方だった。
彼女を喜ばせたくて贈ったはずなのに、逆に自分が彼女以上に感激してた。
嗤ってしまうけど-彼女が相手なら諦めるしかなかった。
何をされても。
何を言われても。
幸せだと思う気持ちは隠しようがない-。
けれど去年の事なのに何故今、改めてお礼を?
意図を計り知れず、秀王は無言で泉夏を促す。
握った彼女の右手。
薬指に嵌められた指輪の感触を、指先で確かめながら。
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