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桜の季節が巡っても
第16章 永劫の春
「…もしもの話をしてもいい?」
前置きがなしではとてもじゃないが、言い出す勇気が足りなかった。
「もしも、いつか。そんな時が…もしも、来たのならだけど」
しつこいくらいの断りも、次のひとことを口にする為にはどうしても必要だった。
「泉夏にまた、新しく買ったものを贈りたい。その時は…受け取ってくれる?」
-受け取って欲しい。
秀王の真摯な眼差しに、泉夏は動揺してしまう。
「…もう、もらってる。このひとつで十分だよ?」
多分、こういう答えは求められていない-薄々気付いてはいたけれど。
心臓を速めつつも、自分の判断だけではそれ以上の事は言えなかった。
『そんな時』がどんな時なのか-はっきり分かりもしないのに。
かと言って自分から訊く事も、なんとなく憚(はばか)られた。
「特別なその時ですら…受け取ってくれない?」
淋しげに尋ねられ、泉夏は増々困ってしまう。
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