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桜の季節が巡っても
第3章 恋慕の秋
「…お兄ちゃん」
軽く咳払いをし、泉夏は二人の間に割って入る。
「お兄ちゃん、さっき時間がないって言ってなかった?」
努めて冷静に、泉夏は切り出す。
「なんの用でわざわざ大学まで来たのか知らないけど、話があるなら早くして。私達もそろそろ昼食食べないと、午後の講義に間に合わないんだけど」
「え、もうこんな時間?そろそろ会社に戻らないとやばいな」
腕時計を確認し、龍貴はようやく現実に引き戻された。
「社長さんがこんなとこで油売ってちゃ、部下に示しがつかないんじゃないの?」
いつもいつもやられっぱなしなので、ここぞとばかりに嫌味を言ってやる。
「馬鹿。たまたまこっちの方向まで打ち合わせで来たから、ついでに寄っただけだ。この時間だって昼休みを使ってる。会議が入ってるからそろそろ戻らないとまずい」
言って、泉夏の右手を握る。
「急ごう」
その手を、優しく引いた。
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