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桜の季節が巡っても
第3章 恋慕の秋
麻衣と大樹は訳が分からず、はらはらしている。
「とりあえずその様子だと、相手としては間違ってない-」
-そう思っていい?
僅かに泉夏の瞳が色めいたのを、龍貴は肯定に捉えた。
「先生に会わせてくれたら、もしかしたら今よりは少しはましな関係になれるかも?」
「えっ?」
驚く泉夏の肩を抱いて、龍貴は教室を出ようとする。
「無理だよ。普段だって滅多に逢えないのに。研究室行ったって、いるかどうかも分かんないのに。だとしたらこの広い大学、すぐ探すのは無理-」
焦る泉夏にお構いなしに、龍貴は廊下に足を踏み出した。
「お前はなんですぐ無理とか言うかな。行ってみなきゃそれこそ分かんないじゃん、あ」
最後の『あ』は、尋ね人に向けての言葉。
今、正に探しに行こうとしていた人物が、ちょうどこちらに歩いて来るのが見えた。
「俺って絶対何かを持ってる男だよな?」
龍貴は自らを褒め称え、不敵に笑ってみせた。
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