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桜の季節が巡っても
第4章 予兆の冬
「…寒くない?」
決して口に出来ないそれでなく、当たり障りのない話題を振る。
「…さ、寒いです」
秀王の問いかけに泉夏は俯き、息を整えながらどうにか答える。
夢中で走って来たから今の今まで意識していなかったけれど、言われて初めて身を切るような寒さを覚える。
思えば、上着も着ないで外に飛び出していた。
両手で細い身体を抱き締める泉夏の姿に、秀王は喉まで言葉が出そうになる。
自分が着ているコートを-頭を掠めるが、それは様々な誤解を生み兼ねない行為なのですぐに断念する。
「…先生、もう今日は帰るの?」
秀王の持っていた鞄と、左手に握り締めていた自動車の鍵を見て、泉夏は訊いた。
彼は小さく頷いた。
泉夏の表情が僅かに陰る。
彼女が纏う微かな空気の変化に秀王が気付ば、泉夏が突如顔を上げた。
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