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桜の季節が巡っても
第4章 予兆の冬
ただあなたの姿を見かけて。
ただあなたと今年最後に少しでいいから話をしたくて。
何もしないままの自分では終わりたくなかったから-。
「無理なら最初からここにいない」
祈るような気持ちで自分を見つめる泉夏に、秀王は穏やかに微笑んだ。
眼鏡の奥は-どこまでも優しかった。
「良かった…!」
泉夏の頬が安堵に緩んだ。
潤んでしまった瞳を彼に知られぬよう、すぐに横を向く。
胸元まで伸びた黒髪は、いつもは殆ど真っ直ぐにただ下しているのだけれども。
今日は少し気合いを入れて、ヘアアイロンで丁寧に巻いていた。
それを更に高い位置で結んでおり-顔を逸らした拍子に空気を含んで、ふわりと舞う。
普段は滅多に見えない白い項が晒される。
思いがけずそれを偶然垣間見てしまった秀王は、さり気なく視線を落とす。
駐車場で一瞬、心奪われたばかりだったのに。
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