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桜の季節が巡っても
第4章 予兆の冬
「誤解だ」
笑って、訂正しておく。
嘘だあ~!-ご機嫌斜めの麻衣を横目に、秀王は泉夏に言った。
「シロの何が気になると?」
「…人間じゃないですよねって確認です」
横を向いたまま、拗ねたような言い方をする泉夏に、彼は先程の意地の悪い自分の発言を反省する。
「少なくとも私は、人の名前では聞いたことがないが?」
非常に分かりやすく、泉夏の顔つきが変わる-緊張の糸が解れたように。
「わんちゃん…?」
まだ手放しで喜べない泉夏は、更に追及する-答えてくれるかは半信半疑だったけれども。
「…十年以上前から飼っていた、私の唯一の家族だ」
穏やかに、秀王は言を紡いだ。
泉夏は喜びかけ-違和感を覚える。
飼っていた?
唯一の?
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