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桜の季節が巡っても
第4章 予兆の冬
「お礼?」
秀王は、怪訝そうな眼差しを泉夏に送った。
「一年間講義をしてくれて。終わった後もいつも嫌な顔一つせず、質問に答えてくれて。本当に感謝してます。ありがとうございました」
-ありがと、先生。
心でもう一度、声にならないお礼を呟いた。
頭を下げれば、緩やかに巻かれた艶やかな黒髪が、ふわりと舞った。
泉夏の頭上に、声が降る。
「赤ペンと、ノートを借りても?」
「ペン?」
-ノートも?
疑問に思いつつ。
手にしていた筆箱から急いで赤いボールペンを取り出し、ノートと共に彼に渡す。
受け取った秀王は再び教壇に戻った。
一番最後のページを開いた秀王に、泉夏は混乱しつつも了承する。
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