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桜の季節が巡っても
第5章 別離の春
座ろうとしたその時。
ベンチの上に一片の花びらを発見する。
指で拾い上げ、腰を下ろす。
おんなじ、桜色。
私のこの指先と-同じ色。
先生が綺麗だと褒めてくれた、この色と-。
去年の夏休み明けの早朝。
ここにはあなたが座っていた。
そうしてここに肘をついて、頬杖を-同じポーズをとってみる。
ベンチに置き去りにされていた花弁を、そっと鼻先に持ってゆく。
懐かしい、香り。
あの日。
あの時と。
全く変わらない、匂い。
そんな事絶対有り得はしないのに。
あなたがここにこうして座っていた時の残り香を、嗅いでいるような錯覚を起こし始める。
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