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桜の季節が巡っても
第5章 別離の春
こういうとこがなきゃいいんだけど。
そこでふと、泉夏は自分の心が軽くなってるのを感じる。
くだらない受け取りをしているうちに-晴れ晴れとまではいかないまでも、あのひとの事を思い出さずにいれてた気がする。
なんかいつも知らない間に、何気に助けてもらっているのかも-口には出してはなかなか言えない感謝の言葉を、胸の奥で呟く。
「そういやお前、何かあったの?」
「え?」
龍貴の問いに、現実に引き戻される。
「え、なんで?」
「いや、さっき今そんな気分じゃないとかなんとか言ってなかった?」
言えばいいのか、どう言えばいいのか-少し悩む。
言い淀む彼女の顔を、訝し気に龍貴は覗き込んだ。
「…有栖川先生が大学を辞めちゃって」
意を決した、か細い泉夏の呟きに、龍貴は微かに目を見開いた。
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