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桜の季節が巡っても
第5章 別離の春
分かってる、諦めなきゃいけない事。
分かってる、あのひとには逢えない事。
分かってる、どんなに想っていても意味がない事。
分かってる。
けどせめて、さよならだけは言いたかった。
せめて一言、あなたが好きだったと伝えたかった-。
「何度も何度も何度でも言うけど、もう泣くなよ。その他は対処の仕様があるけど、泣かれた時は正直、流石の俺でも結構困ってるんだ」
しつこいくらいに、龍貴は念を押す。
「…分かってる」
「昨夜みたく俺はなんにも悪くないのに全てを俺のせいにされて、お兄ちゃんにまた説教されるのも勘弁して欲しい」
あの時間に家の前にふたりでいる事自体をまず怪しまれ-これはまあ、仕方ない部分はある。
加えて、直前まで話していた話の内容が内容なだけに泉夏の表情が沈んでいたものだから、一緒にいた自分が何か良からぬ事をやっていたに違いないと、涼に即決された。
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