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桜の季節が巡っても
第6章 落涙の夏
メイクなんて勿論してないからすっぴんのまま。
汗で身体も、顔も、髪の毛もべたべた。
あなたに逢う時は必ず、最高の私で-お洒落を欠かさなかったあの時の私は今どこに?
ぼろぼろのこんな私の姿で?
羞恥と惨めさが頭を過る。
けれど。
歩行者信号が青になった。
泉夏は駆ける。
どんな恥ずかしい自分だって、あなたに勝るものなんて。
どんなに願っても遂に一度も夢にすら現れてくれなかった、あなた以上のものなんて。
あなたにもしも逢えるのなら、何を引き換えにしたって構わない。
目の前に、目的の大きな建物が見えてきた。
入り口でようやく、泉夏の足は止まる。
三階建ての図書館を見上げる。
呼吸を整え、エントランスへ入った。



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