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桜の季節が巡っても
第6章 落涙の夏
車に乗る瞬間。
流石に泉夏は不安そうな瞳で彼を確認した。
『誓って何もしない。どこにも行かない』
そんな彼女を秀王は優しく、諭した。
それから恐らくもう十分以上-駐車場の車内で泉夏が泣く以外、ふたりはほぼ無言で並んで座っていた。
なんとかそろそろ涙を終了して欲しい-居心地の悪さを感じ、秀王は泉夏をそっと盗み見した。
そこである事実に気付き、躊躇いの後(のち)彼は尋ねる。
「…寒くない?」
「え…?」
泉夏は泣き腫らした目で、彼を見た。
「…脚」
彼女から視線を外し、努めて冷静に秀王は呟いた。
数秒後。
何を言われたのかをようやく理解した泉夏は頬を染め、窓際ぎりぎりに身体を寄せた。
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