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桜の季節が巡っても
第6章 落涙の夏
自分よりもずっと年上で。
自分よりもずっとずっと、立派なひとで。
そんな初歩的な問題、大学を辞める時点で一番に考えているに決まってる。
世間知らずだと思われたかな-泉夏は最高に恥ずかしくなる。
しかし。
それよりも彼の答えに、ふと思い出した事があった。

『そういう対象はいないけれど、養わなければならない奴はいる』

彼は言っていた。
でも、今は-。
「…先生。シロの事、訊いてもいい?」
泉夏は恐る恐る、秀王の目を見た。
秀王の瞳孔が僅かに開き、片頬が微かに動いた。
踏み込んではならない領域だった?
拒絶覚悟だったけれど-彼は、頷いてくれた。
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