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桜の季節が巡っても
第6章 落涙の夏
「間違いだったら、ほんとにごめんなさい。それは先に謝っておきます。…シロは、もういないの?」
泉夏は消え入りそうな声で、恐る恐る訊いた。

『十年以上前から飼っていた、私の唯一の家族だ』

飼っていた-過去形。
その一言が、引っかかっていた。
尤も。
もっとずっと気になっていたのは、その後の台詞だけれども。
それは流石に彼の奥底に入り込み過ぎていて-尋ねる勇気は、とてもなかった。
「去年の末に死んだ。公園で瀕死の状態でいたところを拾って…それから十三年も生きてくれた」
彼の言葉を、泉夏は胸が塞がれる思いで聞く。
自分から促したくせに-辛くて堪らなかった。
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