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桜の季節が巡っても
第6章 落涙の夏
「もう戻って来ないつもりだった。心残りにならないように少しずつ、最低限の連絡先以外を絶とうと思い、四月からは拒否設定にしてた。ただ携帯のメールだけはし忘れていた…と言うか、去年機種変と同時にアドレスも変更してから、殆ど誰にもアドレスは教えていなかった。教えた誰からも送られてこなかったし、まさか送ってこれる誰かがいるとも思っていなかった」
-だから今日は、相当驚かされた。
秀王の話を黙って聞いていた泉夏は顎を上げ、力強い両眼で彼を見据えた。
その目は泣き過ぎて赤く腫れていたけれど。
それでもそんな彼女を奮い立たせたのは-、
「私を誰だと思っているんですか」
秀王から決して視線を離さずに、泉夏は誇りを持って言い放った。
「大学一試験の評価を厳しくつけると有名だった有栖川准教授の授業で、二度もS評価をもらった学生ですよ。甘く見ないで下さい」
その気高い泉夏の姿に、秀王は思わず息を呑む。
そして。
心、奪われる-。
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