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桜の季節が巡っても
第6章 落涙の夏
「…朝早くからメールしちゃったから起こしてしまった?」
馬鹿みたいにどきどきしたりしないように、素早く話題を探す。
内心、心配していた事。
しかし、彼は首を振った。
「もう起きていた…そっちこそ、随分早い時間だったけれど?」
まさかあなたを想って夜通し泣き続けてた-とは言えず。
泉夏は曖昧に笑う。
時間が経てば経つ程、別れが辛くなる。
用事を済ませて早く帰ろう-恋しさを絶ち切る如く、単行本を少々乱暴にバッグにしまう。
代わりに彼の目の前に差し出したのは-、
「本当は昨日持って来れば良かったのだけど、うっかりしていて。そして、もっと早くに先生に確認出来なくて、ごめんなさい。でも、何度も訊こうとしたの。それだけは信じて欲しい。でも、なかなか話す機会がなくて-」
-これ、有栖川先生の?
泉夏が取り出したそれに、秀王の瞳孔が開く。
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