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桜の季節が巡っても
第6章 落涙の夏
胸が高鳴る。
その時の事、未来永劫に忘れない。
「突然大きな風が吹き荒れて、キャンパス中の桜の木が大きく揺れました。思わず私、目を閉じたんです。薄桃色の花びらが次々に舞い落ちてきて…風が落ち着いた頃、ようやく恐る恐る瞳を開けました。そしたら」
泣かないと決めてきたのに緩みそうになる、涙腺。
「有栖川先生。あなたが、目の前に。まだ宙を漂う桜の花びらが残る中、あなたがいた。私のすぐ側に、あなたが」
そしてそれは正に彼に堕ちた瞬間。
一面桜色の絨毯。
桃色の花弁が空から降ってきたその時。
彼女の心は淡く、甘い、恋の色に染まった。
今日までずうっと続く、片恋の幕開け-。
泉夏は隣りに座る彼を、恋慕の瞳で見つめた。
秀王は熱に潤んだかのような彼女の視線を受け、見つめ返す。
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