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桜の季節が巡っても
第6章 落涙の夏
あの日。
あの時。
会ったばかりの自分の為に、何故。
心待ちにしていた入学式を遅らせてまで、何故。
アドレスを解いてまで、何も言わず大学を去った自分に会いに来たのは、何故。
昨日会った瞬間涙を流したのは、何故。
見ているこちらが苦しくなるくらい、何度も嗚咽を漏らしていたのは、どうして?
泉夏は息を吐(つ)いた。
早く離してくれないと、どんどん愛しさだけが募ってしまう。
言わなくても、なんとなく察しはついてるはずなのに。
言わないと、彼はきっと離してはくれない。
「…先生はいい加減気付いてるはずです、私の気持ち」
泉夏は痛みに耐えて、言葉を発した。
秀王は眉を(ひそ)顰めた。
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