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桜の季節が巡っても
第6章 落涙の夏
「普段言われ慣れていないから、当然返答も慣れてなくて。あんな事を思わず口走ってしまったけれども、あれは自分自身に対しての言葉だったと言うか-」
遮り、泉夏は呟く。
「…言われ慣れてないなんて、嘘」
「なんで?本当だ」
「…」
「どれだけもてる男だと勝手に想像してる?」
愉快そうに眼を細めた彼に泉夏は頬に朱を注ぎ、急いで顔を逸らす。
「…先生は完璧過ぎるから高嶺の花で、みんななかなか言い出せないだけです」
拗ねたような声で、泉夏は言い放つ。
自分だっていつもどれ程の勇気を振り絞って、話しかけていたか。
今日だって、最後だと思ったからこそ。
そうじゃなければきっと、想いを伝えるだなんて。
「全然、完璧なんかじゃない。もし俺が女だったら、絶対他の男を選ぶ」
自嘲気味な秀王の呟きに、泉夏は多少の引っかかりを感じて彼を見る。
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