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桜の季節が巡っても
第6章 落涙の夏
「ちょっと鈍感過ぎます。いくらなんでも薄々、私の気持ちに気付いてくれてても良かったのに」
「今から考えれば思い当たる節がなくもないが…誰かを好きとか嫌いとか、そういう感情と暫く無縁の生活だったから正直、思いも寄らなかった。図書館で泣かれた時は本当に困ってしまって-」
「嬉し泣きですよ」
「今なら分かる」
彼の目はこの上なく温かかった。
表情はこの上なく穏やかだった。
あなたの隣りで、こうしてあなたをずうっと見ていたい。
他のものなんて、何一ついらないのに。
あなたが欲しいだけ。
全部他のものと引き換えで構わないから、あなただけが欲しい-。
別れの時が近付いているのをひしひしと感じ、泉夏の胸は張り裂ける寸前だった。
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