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桜の季節が巡っても
第6章 落涙の夏
「本当に、気持ちは嬉しかった。それは嘘偽りない。その想いに応える事が出来たのなら、どんなに良かったかもしれないけれど」
秀王はそこで話を区切り、泉夏を見つめた。
「申し訳ないけれど、俺はだめだ。自分自身がお勧めしない。残念ながら、誰かを幸せに出来るような人間じゃない」
結果は最初から分かっていたけれど、やっぱり彼自らの口から聞くのは相当辛い。
例えどんなに自分を傷付けまいとして、言葉を選んでくれているとしても。
「俺なんかよりも、もっとずっといい奴が他にいる。…案外すぐ側にいるかもしれない」
「…誰の事を言ってるんですか」
あなた以外のひとなんて。
「先生は自分の事に関してはまるで鈍感なくせに、他の事になるとなんで途端に鋭い振りをするんですか」
目尻に滲む、涙。
泉夏の掠れた声音に、彼は僅かに苦笑する。
「振りか」
「振りですよ。全然、全く、当たってない」
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