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桜の季節が巡っても
第8章 忘却の冬
机の一番上の引き出しも、必要以上に開けなくなった。
大学の中であなたの残像ばかりを追わなくなった。
休日には友達と遊びに行って。
二十歳に(おとな)になったからお酒を飲んで、楽しく過ごす夜もある。
夏の間に切った髪の毛もまた伸び始めてる。
短いスカートでだって通学して。
前期試験は正直成績が下がってしまったから、勉強もまた頑張るようになった。
こうやって図書館の中にも-普通に入れるようになった。
それから。
それから。
それから-。
閲覧席で、文学の棚から持って来た一冊の本を捲る手が止まる。
両手の爪は、桜色のまま。
これだけは、どうしても、まだ他の色には塗り潰せない。
これだけは、もう少し時間を頂戴。
未練たらしいのは百も承知。
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