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桜の季節が巡っても
第8章 忘却の冬
あのひとが手にしたかもしれない、本。
その本を読む私。
誰にも言えない。
誰にも内緒のあなたと私だけの、永遠の秘密-。
未だに首を傾げ考え続けてる大樹を、泉夏は促す。
「夕ご飯、食べに行こ。急がないと、映画始まっちゃうよ」
映画-その言葉に、大樹は我に返った。
「今日も駅裏のパスタ屋さんでいいの?」
「私は美味しいから行きたいけど。伊東君が飽きたなら他のお店でもいいよ」
「飽きてない。流川と一緒ならなんでも美味しい」
「…絶対そんな台詞吐く人じゃなかったよね、伊東君」
「流川にしか言わない」
大樹は再度、去年までだったら多分口にはしなかっただろう一言を泉夏に放った。
何を言ってもまた気恥ずかしい思いをさせられそうで、泉夏はもう追及しない事にする。   
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