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桜の季節が巡っても
第8章 忘却の冬
「だってさ。なんだか昨日美味しさをあんまり感じなくってさ。とりあえず口に入れただけ、みたいな?だから今日は麻衣と味わって食べたかったんだもん」
「美味しさ感じなかったの?」
「感じなかった」
「なんかあったの?」
「…私まだ伊東君とふたりだけでどこかに行くのは、早過ぎる気がした」
コップに注がれた冷水で唇を湿らせる。
「昨日で三回目くらいじゃなかった?伊東君と会うの」
「うん。なんかその度に少しずつなんだけど…私の心の中に入ってこようとするのが、あからさまに分かるって言うか」
-それが、ちょっと。
泉夏が声のトーンを落とせば、麻衣は呆れたように返した。
「そりゃ好きなんだから、当然だよね」
そうなんだけど-泉夏は口を閉ざした。
秋にもう一度好きだと言われた時。
動揺しつつも、自分の気持ちを正直に伝えた。
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