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桜の季節が巡っても
第8章 忘却の冬
『これからももし、また触れてくるような事があれば、ふたりでどこかに行くのはもう無理』
はっきりと宣言して以来、大樹は手に触れてはこなくなった。
ちょっと気持ちが逸っていたと謝ってきてくれた-泉夏はそれを受け入れた。
大学の友達数人で遊びに行く事もあれば、友達をほんのちょっとだけ超えた関係として、ふたりで食事や買い物に行く事が日常になりつつある、大学二年生の冬。
冬休み前の大学のカフェテリアでは去年と同じように、クラスの女子同士でクリスマスに集まる計画を立てていた。
話がまとまり、たわいもないお喋りをした後(のち)。
そろそろ帰ろうかと身の回りを片付けていると、隣りに座っていた麻衣が耳打ちしてきた。
「クリスマス、伊東君と過ごさなくていいの?」
思ってもいなかった事を突如訊かれ、泉夏は戸惑う。
「だってさ。彼氏がいれば普通、大抵は一緒に過ごす日だよね?」
「彼氏じゃないし。友達だよ」
泉夏は即答する。
冷たいなあ-麻衣は親友の横腹を、肘で軽く突いた。
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