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桜の季節が巡っても
第8章 忘却の冬
「なんかいきなりだったし。どうしたんだろうと訊こうとしたら、伊東君が来て-」
それきりになってた-今の今まで忘れてた、その程度の出来事。
今更どうしてそんな事を知りたいのか-泉夏にはさっぱり分からなかった。
「龍のやる事いちいち気にしてたらきりないよ?殆ど悪ふざけしてるだけだから」
なんとなくだけど大樹の元気がなさそうで、慰めでもないがそう言ってみる。
あの時。
彼女は大樹に背を向けていたが、あの彼の右手が顔-恐らく顎に触れていたのは、明らかだった。
大樹の姿を認めた彼は余裕の微笑みで挨拶し、ゆっくりとその手を離したけれど。
今だから言うけど、目の当たりにした瞬間、大樹はかなりショックだった。
自分との差を改めて、まざまざと見せつけられた。
全てにおいてあの彼の方が、自分より遥かに勝(まさ)っているのは知っていた。
偶然でもなければ、自分は彼女に触れない。
触れられない。
それきりになってた-今の今まで忘れてた、その程度の出来事。
今更どうしてそんな事を知りたいのか-泉夏にはさっぱり分からなかった。
「龍のやる事いちいち気にしてたらきりないよ?殆ど悪ふざけしてるだけだから」
なんとなくだけど大樹の元気がなさそうで、慰めでもないがそう言ってみる。
あの時。
彼女は大樹に背を向けていたが、あの彼の右手が顔-恐らく顎に触れていたのは、明らかだった。
大樹の姿を認めた彼は余裕の微笑みで挨拶し、ゆっくりとその手を離したけれど。
今だから言うけど、目の当たりにした瞬間、大樹はかなりショックだった。
自分との差を改めて、まざまざと見せつけられた。
全てにおいてあの彼の方が、自分より遥かに勝(まさ)っているのは知っていた。
偶然でもなければ、自分は彼女に触れない。
触れられない。

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