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桜の季節が巡っても
第8章 忘却の冬
でも。
あの絶対の自信をいつも身に纏う彼は一切の躊躇いもなく、彼女にいつ、どんな時でも、自由に接触してみせる。
今までも何度だってそれを見せつけられて、正直内心穏やかではなかった。
けれど。
あの時は本当に、後頭部を殴られたような衝撃だった。
自分が例え偶然であれ最も触れにくいであろう、身体の一部分。
彼女の顔に。
彼女の細い、顎の先に。
そんな場所。
どんな時に。
触れる必要が?
少なくとも、大樹は一つしか知らなかった。
追い打ちをかけたのは彼女が些かの抵抗の跡もなく、あの彼にその指を触れせさせていた事実。
平気な振りをするだけで精一杯だった。
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