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桜の季節が巡っても
第8章 忘却の冬
お袋が泉夏ちゃんに会いたがってたから、ちょっと顔見せてやったら?-二階から言われ、本当に少しのつもりでお邪魔したのが。
泉夏の母親の絢子も慣れたもので、快く了解してくれた。
百合子の突然の強引な誘いは昔から。
でもその見た目と可愛らしい言動から、何故か憎めないし許せてしまう。
彼の母親はそういう人だった。
「ふたりだし適当に食べようと思ってたけど、泉夏ちゃんがいるなら腕によりをかけるから期待しててね」
うきうき非常に楽しそうな百合子に、泉夏はただ御馳走になるのも悪いので手伝いを申し出たのだが。
「泉夏ちゃんはいいから。その辺で座って寛いでいて」
あっさり拒まれ、泉夏はリビングのソファに遠慮がちに身体を沈めた。
寛いでてと言われても-テーブルを挟んで真向いの彼をそっと、見る。
ガムを噛み締めつつ、なんとはなしにスマートフォンを眺めていた龍貴は、泉夏の視線を感じ取り顔を上げた。
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